超音波センサ
【はやわかり】トランスデューサとは?-機能、役割、原理など-
工業用の非破壊検査向けに、広く利用されている超音波センサ。その基幹部品であるトランスデューサは、どのような仕組みや原理で対象を測定するのでしょうか。これから初めて超音波センサやトランスデューサを利用される方にもわかりやすく解説します。
こんな方におすすめ
- トランスデューサや超音波センサについて理解したい方
- 非破壊検査やそのシステムに関心がある方
超音波トランスデューサの機能、役割、原理
超音波トランスデューサは、超音波を用いた測定において、超音波の発信と、超音波エコーの受信・電気信号への変換を担うデバイスです。
一般的に超音波パルサレシーバと一緒に用いられます。超音波パルサレシーバが超音波トランスデューサにパルス信号を与える(印加する)と、超音波を発信します。この超音波が測定対象に当たり、反射してくると(超音波エコー)、超音波トランスデューサがこれを受信して電気信号に変換します。超音波パルサレシーバはこの信号を受信、解析を行う他の機器に共有します。
工業用途や医療用途で用いられることが多く、当社の超音波トランスデューサは主に工業用途で、測定対象を壊さずに内部を検査する非破壊検査向けの装置に用いられています。
超音波による非破壊検査で用いられる超音波画像検査装置などがその一例です。この装置では水中に検査対象を置き、収束した超音波を照射して、そこからのエコーを測定することで検査対象の傷やボイドなどを検査します。
一般的には超音波トランスデューサの周波数(発信できる超音波の周波数)が高いほど高精細な測定が可能になりますが、通常、検査対象に届くまでに超音波の周波数は減衰します。このため、検査対象の材質や測定位置(深さ)に応じた超音波トランスデューサの周波数、エレメント径(超音波を発振する部分)や焦点距離の選択が重要になります。
東レエンジニアリングDソリューションズのトランスデューサの特徴
当社の超音波トランスデューサの最大の特徴は、東レで開発された高分子圧電材料であるフッ化ビニリデンと三フッ化エチレンの共重合体P(VDF-TrFE)を使用していることです。
この材料は、圧電効果の高さを示す指標である電気機械結合係数Ktが、高分子圧電材料としては最も高いことが特徴です。圧電効果が高い材料は、超音波の微細な振動が当たったときでもその圧に応じてつど電気を発します。したがって超音波を電気信号に高効率で変換できることになり、超音波トランスデューサの使用に適した材料となります。
一般的な超音波トランスデューサにはPZTなどのセラミック圧電材料が使用されています。対してP(VDF-TrFE)を用いる場合は、超音波トランスデューサでよく使用される音響レンズが不要となるため、音響レンズの表面から反射してくる超音波エコーがなく、それによる不感帯(超音波を測定できない時間)も生じません。つまり、測定を阻まれることがないという特徴があります。
また無機系の圧電材料を用いた場合は測定可能な周波数帯域が比較的狭く、波形もダンピングが悪くなる(波数が増える)ことが知られています。しかし、P(VDF-TrFE)を用いた超音波トランスデューサは工業用超音波トランスデューサとしては理想的な広帯域を実現できます。波形もダンピングよく、尾引き(パルス波形の劣化)の少ない理想的な1.5波となります。
超音波トランスデューサに欠かせない「相棒」超音波パルサレシーバ
超音波パルサレシーバは、超音波トランスデューサを駆動し、超音波トランスデューサから出てきた信号を受信するための装置です。
半導体検査用途では、超音波トランスデューサをパルス信号で駆動するために、信号の受発信を行う超音波パルサレシーバを組み合わせて用います。このため、適宜、その超音波トランスデューサに合わせた超音波トランスデューサを選択します。一般的には、使用する超音波トランスデューサの2倍程度の周波数帯域を持つ超音波パルサレシーバを使用することが推奨されています。
超音波センサのひろがる用途
当社の超音波トランスデューサは、現在は主に非破壊検査の分野で、ボイドや傷の探傷、測定対象の厚み測定などの目的で採用されています。例えば、鉄鋼の検査用途、半導体の剥離検査用途など、工業分野で幅広く使用されています。
近年では、電子機器の高性能化に伴い製造段階での検査の精密化が進んでおり、特に高精細な検査が必要となる半導体検査用途では、100MHzを超えるような高周波数の超音波トランスデューサのニーズが高まっています。
こうしたなかで当社は、超音波トランスデューサの高性能化を進めるとともに、超音波パルサレシーバの高性能化にも取り組み、お客様のご要望にお応えしていきます。