水質分析計の技術開発

東レエンジニアリングDソリューションズでは、お客様の日々の水質計の利用状況・環境分析に基づき、より手軽かつ低コストに分析を行える製品開発や、高いメンテナンス性を実現しています。

手軽な操作性と低ランニングコストを実現する製品を生み出してきた製品・技術開発の歩みや最新の開発トピックスをご覧ください。

開発の歩み

技術開発

1970年代

自社用TOD分析装置の開発

TOD(Total Oxygen Demand、全酸素要求量)は、水中の有機物を高温で燃焼させ、消費される酸素の量を測定することで得られる水質分析の指標です。東レは1973年、分析計ユーザとしての長年の経験と、自社の新素材開発技術を結集し、TOD分析装置を自社用で初めて開発しました。本製品は、オンライン(外部から水溶液を吸い上げる)用として最も重要な信頼性と保守性を高めたものでした。

しかし、生産工場の排水に含まれる物質が多岐にわたること、また開発経験の浅さから、当初はあらゆる種類の汚濁排水に十分に対応できるアプリケーション技術は確立できていませんでした。こうした状況下では予期せぬトラブルの発生も懸念されます。そのため、事業化に至ってからも、アフターサービスを通じたデータの収集と蓄積を続け、技術の確立を図っていきました。

密封燃焼方式により、業界一低温でのTOC分析を実現

TOC(Total Organic Carbon、全有機炭素)は、水中の有機物を高温燃焼または湿式酸化により分解させ、発生する二酸化炭素の量を測ることで得られる水質分析の指標です。しかし燃焼温度が高温であるため、分析装置内のパーツなどへのダメージが大きく、メンテナンスコストが高くなるという課題がありました。そこで当社は、低温でも精度の落ちない密封燃焼方式を採用した水質計を開発しました。これにより触媒や燃焼管の寿命が飛躍的に向上したことはもちろん、省エネルギー化も実現しました。

1980年代

湿式酸化方式による超純水用TOC分析装置を開発

1983年には、湿式酸化分解方式を採用した純水用オンライン型TOC 計を上市しました。湿式酸化分解方式とは、試料に酸化剤を添加することで、含有される有機物を科学的に酸化分解し、生成された二酸化炭素を測定する方式です。燃焼酸化方式と比べ酸化反応が緩やかであるため、一度の測定で大量の試料を酸化することができ、極微量のTOC測定に適しています。

本製品はこうした特徴から、工場排水の下流で最後の水質確認を行う用途で採用され、環境保全に貢献しています。

2000年代~

オンライン型 TOC 計の決定版・TOC-200シリーズを上市

2016年には、当社オンライン型TOC計の「決定版」と言えるTOC-200シリーズを上市しました。

本シリーズは、独自の低温密封燃焼方式を採用し、長期・安定的な測定を実現したTOC計です。40年以上にわたり蓄積してきた技術と実績に基づき、低コストと簡単操作、小型・省スペースを両立しています。

また、懸濁物質の発生源(高濃度領域)での採集物から、放流水や雨水など(低濃度領域)まで、あらゆる試料と測定ポイントに対応。独自の触媒構成と前処理フィルターにより、高濃度懸濁物質を含む試料や海水試料の安定測定を実現しました。さらには用途に応じて流路や希釈機能別に機種を揃えるなど、お客様ニーズに細やかに対応しています。

試薬不要で維持管理が容易 TOD-200

2016年に発売した東レTOD自動分析装置は、河川、湖沼、海域、工場排水などから採取した試料を対象に、濃度差検出方式によって全酸素消費量(TOD)を自動測定する装置です。オンライン、オフラインの両方に対応し、迅速かつ正確な測定を可能としています。独自開発のジルコニア固体電解質センサを採用していることも特徴で、これにより長期にわたって安定的に高精度での測定を行えます。45年以上にわたる技術蓄積をもとに、簡単操作とさらなる信頼性・保守性を実現しています。

開発トピックス

消耗品劣化を防ぐ、“650℃低温密封燃焼方式”の実装

TOC計内部にある燃焼炉は、900℃以上の高温となるものが少なくありません。このため周辺のパーツや、触媒などの消耗品へのダメージが大きく、メンテナンスコストが高くなっていました。

一般的な燃焼法では通常、燃焼温度が高いほど感度が高くなります。しかし650℃での密封燃焼法を採用すれば、一般的な900℃での燃焼法と比べ、検出率の平均値、バラツキとも前者の方が安定することが確認できました。

本方式の実装により、触媒や燃焼管の寿命が飛躍的に向上し、省エネルギー効果も得ることができました。

燃焼炉

メンテナンスの手間を削減する“フィルタ・配管自動洗浄”

水質計内部のフィルタや配管が詰まると、計測がストップしてしまうなど、運用上のリスクにつながります。そこで当社は「自動洗浄型フィルター」を独自に開発しました。

自動洗浄型フィルターは、円形のディスクとクリーニングブレードを重ね合わせた機構を有し、網目のないエレメントで試料を濾過する前処理器です。ACFエレメント部は、約100メッシュ(147μm相当)の目開きで、試料に含まれる懸濁物質をキャッチします。この懸濁物質をクリーニングブレードがかき落とすと、余剰サンプルの流れによって洗浄され、ドレインから排出される仕組みです。

また、エレメントの目詰まりを軽減させるため、洗浄水を使用した逆洗浄機能や、エレメントの通過時間を制御するオプションも用意しています。こうした機能により、さらなるメンテナンスの手間の削減を実現しています。

DXオプションの追加

水質計は人が制御する位置から離れたところに設置されることが多く、異常発生時の対応が遅れる可能性がありました。そこで当社の最新シリーズであるTOC-210シリーズでは、異常発生を遠隔監視し、スマホに通知するオプションを追加しています。このほか、部品の稼働状況、交換時期、故障状況などを把握・管理することが可能です。