超音波センサの技術開発

東レエンジニアリングDソリューションズの超音波センサ(トランスデューサ、パルサーレシーバ、ハイドロフォン)は、半導体業界を始め多くの非破壊検査の現場で採用されており、超音波トランスデューサは世界シェア50%を誇ります。

独自設計により高精度な製品を実現してきた製品・技術開発の歩みや最新の開発トピックスをご覧ください。

開発の歩み

1980年代

高分子超音波トランスデューサを開発

1982年に東レで開発された高分子圧電材料であるP(VDF-TrFE)を使用し、当時として最高性能の高分子超音波トランスデューサを開発。それまでは無機材料(セラミックス)の超音波トランスデューサが主流であったなかで、高分子材料というしなやかで加工しやすい材料の特徴を活かしたオンリーワンの超音波トランスデューサとなりました。1983年から医療用向けに、1988年工業用途向けに販売をスタートしました。

1990年代

体表臓器診断用途向けアニュラアレイトランスデューサの販売を開始(現在は販売終了)

シングル型、リニアアレイ型の超音波トランスデューサに加え、アニュラアレイセンサ(年輪状に複数のエレメントが並んでおり、リングごとに発信タイミングを変えることで焦点距離が可変となる)を開発。多くのお客様に採用されました。アニュラアレイ型自体は一般的な構造ではありましたが、当社の高分子圧電材料には、他の圧電材料と比較して誘電率が低く大面積のセンサに適しているという特徴があります。本製品はこの特徴を活かした大口径の超音波トランスデューサであり、お客様の好評を得ました。

薄型鋼板向けマルチアレイ超音波トランスデューサの販売を開始(現在は販売終了)

鉄鋼メーカーと共同で、薄型鋼板向けマルチアレイ超音波トランスデューサを開発、販売を開始しました。1台のセンサの中に複数のエレメントを並べた超音波トランスデューサで、透過法(上下に超音波トランスデューサを配置し、その間を通過するものを検査する)で薄型鋼板中の不純物を検査するという検査システムで使用されました。当社が提供していた部材は超音波トランスデューサのみでしたが、このシステムで検査した材料は品質が良いと市場で好評を博したことから、主力製品の一つとなりました。

ニードル型ハイドロフォンの販売を開始

受信性能が他の圧電材料より高いという当社の高分子圧電材料の特徴を活かし、水中用超音波マイクであるニードル型ハイドロフォンを開発、販売を開始しました。音響ホログラフィで使用される本製品は、φ0.5mmという非常に小さなエレメントで分解能良く測定可能であり、現在も超音波音源の性能評価などに使用されています。

2000年代~現代

各種超音波トランスデューサを開発

高分子圧電材料の特徴を活かした電子白板向け空中超音波トランスデューサ、緑内障診断用超音波トランスデューサ、工業用途向け受信用超音波トランスデューサなど、お客様の要望にきめ細かく対応した製品を開発、上市しています。

超音波パルサレシーバ(IT-3S)を開発、販売開始(現在は販売終了)

2007年には当社の超音波トランスデューサの性能を活かすために、超音波トランスデューサと一体となった超音波パルサレシーバ(IT-3S)を開発、販売開始しました。一般的には超音波トランスデューサとそれを駆動するための超音波パルサレシーバはケーブルでつないで使用しますが、専用設計でこれらを一体化し、ノイズの少ない良好な信号が得られるようにした製品でした。

超音波パルサレシーバ(T301PR)を開発、販売開始

2021年には、小型で高周波(レシーバ帯域~250MHz)に対応したT301PRを開発、上市しました。

本製品ではIT-3Sのような一体設計は採用せず、従来品より性能を向上。世界最小クラスのコンパクトを実現し、検査設備の省スペース化など設置性向上ニーズにも対応しました。当社の超音波トランスデューサと合わせて使用いただくことで、さまざまな用途に対応できる製品となりました。

開発トピックス

高感度・高精度な工業用途向け超音波トランスデューサ

超音波トランスデューサでは一般的にPZT等のセラミック圧電材料が使用されています。一方、当社が1983年に販売開始した本製品では、東レで開発された高分子圧電材料であるフッ化ビニリデンと三フッ化エチレンの共重合体P(VDF-TrFE)を使用。これにより、多くの超音波トランスデューサで使用されている音響レンズを不要とし、音響レンズの表面から反射して測定の妨げとなる超音波エコーを排除することができました。

また無機圧電材料では材料特性の都合上、周波数帯域が狭く、波形もダンピング(波数が増える)が悪いことが知られています。本製品では、P(VDF-TrFE)を用いることでこれも解決しています。工業用超音波トランスデューサとしては理想的な広帯域で、高ダンピングな(波数が少ない)送信波形を実現しました。

動画でトランスデューサの特徴をご覧いただけます

高感度高分子超音波ハイドロフォン

当社が1999年に開発した高感度高分子超音波ハイドロフォンは、受信性能が他のセラミックスなどの圧電材料より高いという当社の高分子圧電材料の特徴を活かしたハイドロフォン(水中用超音波マイク)です。

ニードル型と大口径の二種類があり、ニードル型ハイドロフォンはφ0.5mmという非常に小さなエレメントで、分解能良く測定可能です。大口径ハイドロフォンは、φ9mmとエレメント径が大きく、ニードル型よりも高感度での測定が可能です。いずれも超音波音源の性能評価などに使用されています。

ニードル型(上)と大口径型(下)